肺がんの予防

肺がん死亡者数は、1960年代から増え続けています。男性では胃がんを抜いて、がん死亡の1位です。全体でもトップで、肺がんは約5万4000人(男女合計)です。肺がんを発症する年齢は40代から上がり始め、50~60代になると急激に高くなります。どうすれば防げるのでしょうか。

いうまでもなく、肺がんの原因の筆頭は喫煙です。たばこには40種類以上の発がん性物質が含まれています。喫煙者の肺がんリスクは、喫煙年数にもよりますが、非喫煙者に比べて数倍~十数倍も高いのです。さらに問題なのは、喫煙者の煙を吸う羽目になる家庭や職場での同伴者、同僚のリスクも高くなることです。たばこの発がん物質は、たばこの先から立ち上る副流煙の方に多く毒性も高いからです。
たばこを吸っていると、がんを抑えてくれるがん抑制遺伝子にも傷がつき、修復能力が落ちます。しかし、たばこを止めると十数年後には吸わなかった人のリスクに近くなるといわれます。

もちろん、食生活での予防も大切です。前がん病変の見られた100名を2グループに分け、一方には葉酸とビタミンB12の錠剤を毎日服用してもらい、もう一方には何も与えずに1年後に比較したところ、錠剤を服用した群の約8割では前がん病変が消えたのに対し、服用しなかった群の大半は改善が見られなかったという実験報告があります(東京医科大学の加藤治文教授らの研究グループによる)。
葉酸はビタミンの一種で、ホウレンソウ、カボチャなど緑黄色野菜やレバーに多く、ビタミンB12は、レバー、イワシ、アサリなど魚介類に多い栄養素です。葉酸とビタミンB12は、傷ついた遺伝子を修復する作用があるのではないかと考えられ、緑黄色野菜の摂取ががん予防の基本になるという根拠を裏付けています。また、サプリメント(栄養補助剤)で補う方法も考えられます。

肺がん検診について

胸部X線撮影による肺がん検診が肺がん死亡率を下げるかどうかが、たびたび議論になります。肺がん検診の有効性は、あっても小さいとの見方が世界的には多数のようです。しかし、胸部X線撮影を云々するよりも、たばこをやめてがん予防のライフスタイルを実践することが先決です。