肝臓を守る食品

1.肝臓の機能

肝臓(かんぞう)は、腹部の右上に位置している、人体で最大の臓器です。

人体の化学工場とも言われ、代謝、排泄、解毒にわたるきわめて多面的な働きをしています。

グリコーゲンや、鉄、銅、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンDを貯蔵し、アルブミンなどの酵素をつくり出し、炭水化物をはじめとする多くの物質を脂肪やタンパク質から合成し、いったん貯蔵された脂肪は遊離脂肪酸として血液中に放出されて燃焼し、エネルギーとなります。

さらに肝臓は、コレステロールを合成し分泌します。

さらに、血液から異物や細菌をとりのぞいたり、いろいろな薬物を解毒する働きがあります。

肝臓は、人間の臓器の中で最も再生力の強い臓器です。
半分切除しても、残りが健康な状態ならば一ヶ月程度で元通りに戻ってしまいます。
しかし、肝機能障害の症状が出た時は、すでに肝臓は肝硬変や肝炎などにかかっていることが多く、病気の治療には時間が必要で、もとに戻るまでに10年以上もかかります。

肝臓の機能が低下すると、黄疸(皮膚や白目が黄色に変色)、クモ状血管腫(体に赤い斑点)、女性様乳房(ホルモンバランスが崩れて、男性なのに乳房が出てくる)、腹水(お腹に水分がたまって膨らむ)などの症状が出ます。

2.肝臓の病気

◆肝炎・肝硬変

ウイルス性肝炎やアルコール性肝障害の結果、肝細胞が壊死して繊維化した状態を肝硬変といいます。
肝炎は肝臓の炎症という意味で、病因はウイルス感染がもっとも多いですが、食事をあまりとらずに多量にアルコールを摂取する食生活とも関係があり、化学物質や毒物、薬物、細菌や細菌性毒素、アメーバ疾患、ある種の寄生虫感染などからおこることもあります。
急性の肝炎の場合はほとんど回復します。
しかし、慢性肝炎に移行して肝硬変に進んでしまった細胞は元に戻りません。
しかし、病気や手術で肝臓組織の4分の3を失っても機能が保たれるほど丈夫な臓器です。
重症の急性肝炎によってほとんどすべての肝細胞が壊死(えし)してしまうと、肝不全で死亡したり、肝臓からでている血管が閉塞(へいそく)して死亡することがあります。
肝炎をはじめ肝疾患によくみられる黄疸は、多量のビリルビンが血液中にふえたためにおこる症状です。

◆脂肪肝

糖尿病などの疾患では、肝臓に脂肪が蓄積し、脂肪肝になることがあります。
脳下垂体に障害がある場合や、アルコールやクロロホルムなどの摂取によって脂肪肝になりやすいともいわれます。
妊娠中や、脂肪を多くふくむ食事をとりつづけた後も、肝臓に脂肪が蓄積します。

◆肝臓がん

肝臓がんの多くはC型慢性肝炎、肝硬変から移行したもの、他の部位で生じたがんが転移した場合にみられます。
細菌やアメーバを原因とする膿瘍(のうよう)、異物の浸潤、慢性炎症による肉芽腫瘍などがみられることもあります。

3.肝臓をいたわる工夫

◆体を横にするだけで肝臓の血流量は30%アップ

肝臓は、身体を起こした姿勢の時よりも横になった状態の方が、血流量が増加します。食事の後に30分ほど横になると、肝臓の血流量が多くなり、肝臓の働きを助け、負担を軽くできます。

◆適度な運動で肝臓の血流をよくする

横になってばかりいると、運動不足による肥満や肝脂肪を招きます。
血流を高めるためにも、適度な運動は不可欠です。
特に肝機能を高めるには、腰や背中の筋肉を強化する運動が効果的です。
うつぶせになって身体をそらす運動や、仰向けになって床に手足を運張って身体を持ち上げる、などの運動が効果的です。

◆肝臓のための正しい入浴法

入浴は、血流量を増やすのに最適です。
ただし、湯船に首まで浸かると水圧の影響で肝臓の血液が流れ出てしまいます。
お湯につかる位置は、みぞおちの少し下位までの半身浴が肝臓に理想的な入浴方法です。
半身浴は全身浴に比べ心臓への負担が少ない為、全身の血流量も上がり肝臓の血流も盛んになります。
温度は40℃位のぬるめのお湯で。
入浴時間は、少し汗ばんでくるまで。
寒い時は、お湯に浸したタオルを肩に掛けたり、温水のシャワーを肩にかけて入るとよいでしょう。
ただし、お風呂に入ると全身の血流がよくなるため、お酒で酔ったときは全身にアルコールが回り酔いをひどくさせるので危険です。
二日酔いの予防や症状緩和には、カイロなどで肝臓部分を暖めて血流量を増やすのが効果的です。

◆ストレスが肝臓を脅かす

ストレスを感じると体内の血流量が減少し、これが肝臓に非常に悪い影響を与えます。
ストレスを避ける、または解消する自分なりのリラックス法を見つけておくとよいでしょう。

4.肝臓をパワーアップする食品成分

◆肝臓の分解能力を高めるには、「アラニン」の摂取が有効

「アラニン」は、食べ物に含まれるアミノ酸の一種。
肝臓で分解作業を担っている「酵素」のエネルギー源になるものです。
古くから肝臓に良いとされてきたシジミよりも、ホタテはもっとこの「アラニン」が豊富で、たった2個食べるだけで、シジミ汁10杯分のアラニンを摂り込めます。
干し貝柱でもアラニン量は減っていません。
1日2個で肝臓の分解機能を高めてくれます。
肝臓には肝臓を。
レバーは肝臓に理想的な食材です。
臓器の素材となるタンパク質(必須アミノ酸)を豊富に含み、各種ミネラルやビタミンB群を効果的に摂ることができる「強肝食」といわれます。

◆胆汁を生成するためには、「タウリン」の摂取が有効

肝臓で作られた「胆汁」は腸で分泌され「脂」を分解します。
つまり、胆汁は腸の消化を助ける液体です。
ところが、肝臓が弱ると胆汁の生産力が低下してしまう事があります。
「タウリン」は胆汁の原料になるので、「タウリン」を肝臓に送り込めば、胆汁の生産量を増やせます。
タウリンは、実際に医薬品として肝臓病に処方されています。
タウリンが豊富な食べ物の代表格はカキですが、胆汁生産を高める十分な量をカキで摂るには11個分にも当たります。
ボイルして売られているイカのゲソには、わずか3本分でカキ11個分に当たるタウリンが含まれていて、低下した胆汁生産力を復活させてくれます。

◆良質なタンパク質が、傷ついた肝細胞を修復

脂身の少ない肉や魚、卵、牛乳や乳製品、大豆製品などの良質タンパク質は、傷んだ細胞を癒します。
お米、ジャガイモ、なめこなどを組み合わせると完璧な肝機能バランス食です。
また、胡麻に含まれるゴマリグナンという抗酸化物質が肝機能を向上させます。

《肝臓に優しい食品の新常識》

もともと肝臓は、血液の材料として鉄を貯めていて、肝臓が炎症を起こすと鉄が異常に多くなります。
鉄が多くなると活性酸素が発生して肝炎が悪化してしまいます。
鉄分が多い食品は、健康な人の貧血などを防ぎますが、肝臓が悪い人は炎症をより悪化させてしまうおそれがあります。
あさり、シジミ、はまぐり、魚の血合いの部分、大豆などの豆類、肉類(特にレバー)などは、鉄分が多く含まれています。
肝臓に良いとされる食品を積極的に食べるのは、すでに肝炎を患っている方には逆効果ですのでお気を付けください。