血栓を予防する食品
脳卒中と予防
◆五大生活習慣病と循環器病
日本人の疾患のトップ5は、以下の通りです。
いずれも、生活習慣と密接な関係が指摘されている病気ですそして、死因のトップ3はこの1位~3位と同じです。
2位の心疾患と3位の脳血管疾患の2つをまとめて「循環器病」といい、その死因の合計は1位のがんとほぼ同数になります。
- 1位 悪性新生物(がん)
- 2位 心疾患
- 3位 脳血管疾患(脳卒中)
- 4位 糖尿病
- 5位 高血圧
循環器病は、命が助かったとしても後遺症が残ることが多く、後遺症が残ると、治療のためにたくさんの費用がかかり、日常生活に大きな支障をきたします。
寝たきりになるケースも少なくありません。
生活習慣を改善すると、その発症率や死亡率は大幅に減少します。
後述の『危険因子』をもっている方は、生活習慣を改めることが必須です。
◆脳卒中とは
脳卒中は、専門的には脳血管疾患といい、『脳梗塞(のうこうそく)』と『脳出血』を合わせたものをいいます。
以前は、脳梗塞を脳軟化、脳出血を脳溢血(のういっけつ)といって、さらに出血の場所によって病名がつけられていますが、脳の血管が詰まって血液が流れなくなるのが脳梗塞、脳の血管が破れて出血するのが脳出血です。
たとえば脳を覆うくも膜と脳の間で脳出血が起こると『くも膜下出血』といいます。
いずれも医学の発達や知識の普及により、昭和40年代から死亡率は下がってきましたが、患者数はむしろ増加しています。
☆脳卒中その1・・・脳梗塞(のうこうそく)
動脈硬化が進むと脳の動脈は細くなり、細くなった部分に血液の塊(かたまり)ができて血管が詰まることを脳血栓(のうけっせん)といいます。
また、脳とは別のところでできた血の塊(多くは不整脈などによって心臓内でできたもの)が血流に乗って脳まで運ばれて、脳の血管がつまってしまうことを脳塞栓(のうそくせん)といいます。
こうして血管が詰まると、血液が流れなくなった先の脳の細胞は死んでしまいます。
この脳の細胞が死んだ状態を脳梗塞(のうこうそく)と言います。
脳血栓・脳塞栓と脳梗塞は、結果的に同じ病気と考えていいでしょう。
脳梗塞は、普段経験したことのない吐き気を伴う強烈な頭痛やめまい、大きな耳鳴り、意識喪失、顔や片側の手足の感覚がなくなるしびれ・脱力やまひ、しゃべれない(言葉が理解できない、思ったことを言えない)、片眼が見えなくなるなど、症状の出方は障害の広がりによって違ってきます。
一過性脳虚血発症といって、症状が消えてしまうこともしばしばあります。
症状が消えるのは、詰まった血栓が溶けたからと考えられます。
症状が消えてしまっても、近いうちに重篤な脳梗塞を起こす可能性が高いので、こうした前ぶれがあったら手後れにならないうちに精密検査を受ける必要があります。
~脳梗塞の治療法~
脳梗塞に対して手術が行われることはあまりなく、点滴や薬を用いての、いわゆる保存的治療が主体となります。
一部の施設では、血管内手術(血管内に入れたカテーテルから薬剤を流して血栓を溶かし、血流を再開させる治療)が行われ始めています。
脳梗塞を発症して3時間以内であれば非常に有効とされています。
しかし、3時間を超えるとかえって脳出血を起こしやすくなり危険なため、この治療法は行われません。
したがって、発症してすぐに脳卒中センターのような施設やスタッフの揃った専門施設に運ぶことが、その人の一生を左右することになります。
☆脳卒中その2・・・脳出血(のうしゅっけつ)
高血圧が慢性的に続いていると、脳の細い血管にコブのようなふくらみ(脳動脈瘤・のうどうみゃくりゅう)がいくつもでき、さらに高血圧の強い圧力が加わると、ある日突然その一部が破裂して出血し、脳障害を起こします。
これが脳出血です。
極度のストレスや排便、過度の仕事など、急に血圧が変動したときに発症しやすく、突然金槌で殴られたような激しい頭痛があり、目がまわって吐き気や嘔吐を伴い、昏睡状態もしばしば見られます。
脳全体に血液を送る動脈が破裂するため出血が多く、非常に致死率が高い危険な病気です。
治療は、顕微鏡を使用しての手術で、動脈瘤のくびをクリップで留め、出血を防ぐ外科療法が行われます。
死亡の原因となる再出血が24時間以内に起ることが多く、発症したら手術を急がなければいけません。
脳動脈瘤は小さな風船のようなものですが、非常に小さなことがほとんどですので、破れる前に症状を出すことはまずありません。
一度破れた脳動脈瘤は、必ずといってよいほどもう一度、しかもわりと早い時期に破れます。
一回目の破裂で助かっても、二回目の破裂を起こして亡くなる方が多いので、手術は手後れにならないうちに行う必要があります。
◆脳卒中の危険因子
脳卒中の原因となるものを危険因子といいます。以下は、予防が可能な危険因子です。
- 高血圧
-
血圧は、心臓が送り出す血液によって血管の壁にかかる圧力です。
高血圧が長く続くと脳血管の動脈硬化が進みます。 - 高脂血症
-
血液の中に溶けている脂質(コレステロールなど)が異常に多い状態をいいます。
血液中にたまったコレステロールが酸化するため、動脈硬化を進行させます。 - 動脈硬化
-
動脈は、血液を体のすみずみまで送り続けるパイプ役をしています。
この動脈に硬化が起こると血液の流れが悪くなり、もろく破れやすくなります。 - 糖尿病
-
糖尿病とは、食事からとった糖質(ブドウ糖)をうまくエネルギーとして活用できず、血液中の糖度が慢性的に高くなる状態です。
カロリー過多などの生活習慣と遺伝が大きな要因です。 - 喫煙
-
たばこに含まれる有害物質は、血圧を上昇させ、血液中の善玉コレステロールを破壊します。
その結果、動脈硬化が進行します。 - 肥満
- 肥満は高血圧症や糖尿病を引き起こしやすくなります。
- ストレス
-
ストレスは、血管に負担をかけ、血流に影響を及ぼします。
免疫力を低下させ、血液中のリンパ球が減少して血管に老廃物がたまり、血流が悪くなり、高血圧や動脈硬化の原因となります。
◆脳卒中の予防法
動脈硬化は年をとってから始まるのではありません。
若いうちから始まって年齢とともに進行することが分かっています。
若いうちは無症状で経過し、40代、50代になって発病します。
動脈硬化の予防は若いうちから始めなければなりません。
動脈硬化の予防には食事療法が最も大切です。
魚類の良質の蛋白質は脳の血管の壁を強くして、出血が起こりにくくする役目を果たします。
動物性脂肪の摂取を控える食事療法だけでは血液中のコレステロールが下がらない方は、飲み薬による治療が必要となります。
脳卒中を防ぐ上で最も大切なことは、高血圧を悪化させる因子には、塩分の取りすぎ、飲酒、肥満、ストレス、寒冷などがあげられます。
寒さは血管を収縮させ血圧を上げます。
そのため通常夏よりは冬には血圧が高くなります。
冬にトイレの中やふろ上がりの脱衣場、また玄関先などで脳出血を起こす方が多いのは、暖かい所から急に寒い所に出たため血圧が急激に上昇するためです。
脳梗塞は、汗をかいて脱水になりやすい夏に多発します。
脱水になると血液がドロッとして流れにくくなり血管がつまりやすくなるからです。
夏には常に十分な水分の補給に心掛け、血液をいつもサラッとした状態にしておくようにすることが大切です。
余談ですが、脳卒中の場合は、突然症状が出ます。
ぐずぐずと慢性的に続いている手足のしびれや頭痛の症状の場合は、脳卒中ではありません。
また、脳卒中では、手足の痺れは片側(右、または左)に集中して起こります。
右左同時に痺れるような症状は脳卒中ではありません。
◆脳卒中の後遺症とリハビリ
脳卒中で後遺症が生じても、適切な治療とリハビリによって軽い症状なら完全回復も可能です。リハビリがとても重要なのです。
- 片マヒ
-
後遺症で最も多いのが手足の片マヒです。
発作当日から手足が動かせるようであれば、ほぼ完全に回復します。
1カ月以内に動くようであれば不自由なく使える程度まで、3カ月以上動かせない場合でも、リハビリを続けることである程度動かせるようになります。 - 言語障害
-
障害を受けた脳の場所によって、言葉を理解する力が衰えたり、話そうとすると言葉にならなくなったり、簡単な単語を忘れてしまう「健忘性失語」があります。
失語症は、発病後6カ月を過ぎてから回復することもあります。 - 視覚障害、感覚障害
-
視覚障害とは、視野の片側半分が見えにくくなる「半盲」です。
感覚障害とは、マヒのある手足がしびれたり、痛み、熱さや冷たさ、圧迫感などを感じにくくなることです。
やけどをしても気づかないことがあります。
発病後何ヵ月後もたってから現れることがあります。 - 失認、失行
-
右脳が傷害された場合に起こり、左側半分の空間が認識できなくなります。
失行は、ある特定の行為がうまく行えなくなるものをいい、例えば、服の表裏や、上着とズボンの区別がつかなくなります。 - 情緒障害
-
やる気の低下や気分の落ち込みといった情緒障害も後遺症の一つです。
突然からだが思うように動かない事実は大変ショックであり、仰うつ状態や感情の起伏が激しくなる情緒不安定など、心因性の症状が現れることがあります。
◆血栓溶解酵素
脳卒中は生活習慣病で、健康な人には起こりません。
血栓ができても、通常は「繊溶酵素(せんようこうそ)」が溶かしてしまいます。
宮崎医科大学の美原恒名誉教授は、ルンブルクスルベルスという食用赤ミミズから線溶酵素「ルンブルキナーゼ」を発見し、1983年にスウェーデンのストックホルムで開かれた国際血栓止血学会で発表しました。
現在では世界中で「ミミズ酵素」として医薬品や健康食品で使用されています。
副作用のない食品成分なので、血栓症をはじめ血栓が原因となって起こる心筋梗塞や脳卒中、さまざまな生活習慣病の予防・改善に、家庭で手軽に摂れるとして重宝されています。