胃がんの予防

胃がんで亡くなる方は部位別のがんで最も多く、年間約5万人で、女性ではトップ(約1万7800人)です。胃がんの発生率は秋田、山形、富山など日本海側で高く、神奈川、沖縄、鹿児島など太平洋側では低い傾向があります。また、米国に移住した日本人では、低くなることも知られています。
漬物や魚の干物など塩分の多いものをよく食べる地域で、がんの発生・死亡率が高いといわれます。塩自体にはがんを引き起こす作用はありませんが、塩の取り過ぎはがん細胞の増殖を促す作用があるからです。食べ物とたばこが最大の要因とされています。

がんに限らず、塩分の取り過ぎは身体によくありませんが、比較的塩分の多いみそ汁はどうなのでしょうか。国立がんセンターの調査では、みそ汁を毎日飲む人ほど胃がんが少ないという報告があります。塩分が多いのに胃がんが少ないとは、どういうことでしょうか。
マウスに、発がん物質とともに一方は食塩、もう一方はみそ(同じ濃度の食塩を含む)を与え、胃がんの発生率を比較した実験があります。その結果、食塩を与えた群では胃がんの発生率が高かったのに対し、みその方は低い結果が出ています。つまり、みそは胃がんの発生を抑えると考えられます。豆腐、野菜、海藻類など具をたくさん入れたみそ汁は、効果的な予防食と考えられます。
牛乳を1日に360ミリリットル以上飲むと、胃がんになるリスクが5分の1~4分の1になるという研究報告もあります。

ピロリ菌が胃がんの危険因子として、一時期マスコミで頻繁に取り上げられました。日本人の6,7割はピロリ菌の保菌者といわれますので、危険因子であるピロリ菌を取り除くべきかどうかが論議になったのです。その後、ピロリ菌に感染させたネズミを使った最新の実験で、ピロリ菌そのものは胃がんを引き起こすことはないが、がん細胞の増殖を促す働きをすることが突き止められました。ピロリ菌が発がんを促進させ、食塩と一緒だとその促進作用はより強くなることもわかりました。ただし、主犯ではないので、保菌者全員を除菌する必要はないと考えられています。